今年度、初めて「年上の部下」と働くことになりました。
その人は定年後も再雇用で働いている、経験豊富な職員です。
自分の意見をしっかり持っている方で、長く働いてきただけに、職場のこともよく知っています。
周りの人たちからは、「部下とはいっても、職場のことについては誰よりも詳しい。やりづらい面があるかもしれない」と聞いていました。
私自身、年上の人に仕事をお願いするのは初めてです。
「どこまでお願いしていいのだろう」
「年下の私から言われることを、どう感じるだろう」
そんなことを考え、最初は少し遠慮しながら関係が始まりました。
「ここまではやる」という線引き
実際に一緒に働いてみると、その人は仕事を順序立てて、きちんと進める人でした。
一方で、
「ここまではやる。でも、これ以上はやらない」
という、はっきりした線引きがあることにも気づきました。
再雇用なのだから、仕事もそれに見合った範囲でする。そんな考えを持っていると知り、
「なるほど、そういうことなのか」
と納得しました。
でも、いずれ自分が同じ立場になったら、同じように考えるかもしれません。
そして、心配していたことが起こった
ある日、関係部署から急な依頼がありました。
「そちらのデータを出してほしい。本日中にお願いします」
ところが、そのデータをパソコンから取り出せるのは、年上のその職員だけ。
そして、その人はちょうどその日はお休みでした。
以前から、
「このデータを出せる人が一人しかいないのは、まずいな……」
とうすうす心配していました。
その心配が、現実になってしまったのです。
正直、絶望的な気持ちになりました(笑)。
でも、「今日中に」と言われれば、何とかするしかありません。
いろいろな人に助言を求め、詳しい関係機関にも問い合わせました。
やり方を一つずつ教えてもらいながら、何とか自分でデータを取り出し、その日の依頼に応えることができました。
出勤してきたその職員に、この出来事を話しました。
すると、その人にはその人なりの考えがありました。
データの出し方は、自分でいろいろ調べながら慎重に決めてきたこと。
急な依頼だからといって、すぐにデータを出すことはこれまでしてこなかったこと。
そして、一度ある方法でデータを出せば、今後も同じ方法で出すことを求められるかもしれないこと。
なるほど。
言われてみれば、それも分かります。
一方で、私の立場では、関係部署から「今日中に必要です」と言われれば、「担当者が休みなので出せません」で終わらせるわけにもいきません。
「そうか。でも、では私はあのときどうすればよかったんだろう」
少し戸惑ってしまいました。
ひそかにノウハウを蓄積する
それから私は、自分でもそのデータを出せるように、少しずつやり方を覚えることにしました。
幸い、その職員に、
「このデータは、どうやって出すんですか?」
と尋ねると、嫌な顔をせず、きちんと教えてくれます。
忙しい仕事の合間なので、一度に全部覚えることはできません。
それでも、教えてもらったことを少しずつ覚え、ひそかにノウハウを蓄積しています(笑)。
次にまた同じような急ぎの依頼が来たときには、
「担当者がいない。どうしよう」
と絶望しなくても、自分で落ち着いて対応できるようにしておきたいと思っています。
考えてみれば、これはその職員が年上だからという問題ではありません。
「この仕事は、この人にしかできない」という状態をそのままにしていたことにも、問題があったのだと思います。
経験のある人が持っている知識を教えてもらいながら、ほかの人でも対応できるようにしておく。
今回の出来事をきっかけに、そんなことも少しずつ進めています。
数年後、私はどう働きたいのだろう
その職員からは、60歳以降の働き方について、いろいろなことを教えてもらっています。
フルタイムで働くのか、短時間勤務を選ぶのか。
働く時間が変われば、給与も変わります。
短時間勤務を選んでも、実際の仕事との折り合いをつけるのが難しいこともあるようです。
そんな話を聞いていると、これは決して遠い先の話ではないのだと思います。
数年後、私はどんな働き方をしたいのだろう。
そして、どんなふうに働く人でありたいのだろう。
そんなことを考えるようになりました。
今一緒に働いているその職員は、自分にとって必要性が見えにくい仕事を頼まれると、
「それはやりません」
とはっきり断ることがあります。
でも、今の立場になってみると、一見すると必要性が分かりにくい仕事にも、その仕事を頼む人なりの理由があることが分かってきました。
たとえば、これから大きな会議に臨む上司にとって、その資料が一つの安心材料になることがあります。
今すぐ何かに使うわけではなくても、少し先の仕事につながっていることもあります。
もちろん、頼まれた仕事を何でも引き受ければいいとは思いません。
自分の働く時間や役割を考えて、できないことは「できない」と伝えることも必要です。
ただ私は、
「なぜ、こんな仕事をしなければならないのだろう」と思ったとき、
「この人は、なぜこれを必要としているのだろう」
と、その背景を少し考えることができればいいなと思います。
どんな「年上の部下」になりたいか
とはいうものの、年上の部下と初めて働くことになったとき、少なくとも私は少し構えてしまいました。
「きちんと仕事をしてもらえるだろうか」
「年下の私が言ったことを、受け入れてもらえるだろうか」
そんなことを考えていたと思います。
きっと数年後、私が年下の上司のもとで働くことになったとき、その人も最初は同じような気持ちになるのかもしれません。
だから私は、柔軟な「年上の部下」でありたいと思っています。
何でも言われたとおりにする、という意味ではありません。
自分の考えは持ちながらも、相手の立場や、その仕事を頼む背景を少し想像してみる。
分からないことは聞き、新しいやり方にもできるだけ柔軟に向き合う。
そして一緒に働くうちに、
「あ、この人なら大丈夫」
と、年下の上司が最初に感じていた警戒感や負担感を、少しずつ軽くしていけたらいいなと思います。
今年初めて「年上の部下」と働くことになって、難しいなと思うこともあります。
でも同時に、その人から60歳以降の働き方を教えてもらい、数年後の自分について考えるようにもなりました。
年上の部下とどう働くかを考えていたはずが、いつの間にか、
「私は、どんな年上の部下になりたいのだろう」
と考えています。
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